初心者が知っておきたい作業服の基礎知識

鉄筋を組む作業員たち

近頃頻繁に耳にする言葉のひとつに「作業服」があります。作業服というのは、一般的にそれぞれの仕事場にあった制服として利用されています。作業によっては普段着慣れている服装を着ていても使える場合もありますが、それでも現場の人にとって作業服が好まれているのは、「安全・安心のために着る」「身を守る」「気持ちを切り替える」といった気持ちにさせてくれるのが、今日までに愛され続けている理由でしょう。最近の作業服は、動きやすさと着やすさはもちろんのこと、その仕事を効率的にこなす上で便利な機能や加工がほどこされています。日々種類が多くなり、目移りしてしまいますが、買う人が目的や用途といったポイントをしっかり決めておくことで選びやすくなります。そこで今回は、初心者が知っておきたい作業服の基礎知識として、基本的な作業服の選び方と、業種ごとに作業服を選ぶコツを紹介していきます。

作業服の選び方

高所作業員

作業服をいざ選ぶときは、どのような点に気を付けたほうがよいのでしょうか?順を追って確認してみましょう。そもそも本来は、ほこりや汚れを気にすることなく、安全に作業を進める役割を果たすことが作業服の目的です。当然ながら、業種や職種、用途によって求められている機能・加工が異なります。しかしながら、根本的な部分は共通していえることがあります。まずは、作業服を選ぶときに何の要素を確認するべきかを説明します。

作業者の要素

作業者にとって実際に作業をする際に重要なことは、「着心地」です。ストレッチ性、通気性、速乾性、吸水性など、着ている本人が作業を続けてもストレスにならない作業服が好まれるでしょう。ほかに気を付けたほうが良い点としては、防汚性、耐久性、形態安定性などを確認しておくと、長い目で考えると中長期的に利用ができるので経済的に作業服を選ぶことができます。

企業の要素

作業服とは、企業にとって同じ組織・チームに属しているという連帯感と、生産性を高めるための要素にもなります。たとえば、とある工場で現場の作業員が同じデザインの作業服を着て作業したところ、社員のミスが減り、生産量が増えたという例があります。専用の服を作業現場で着ることで、プロ意識が生まれて仕事の質が向上することになるのです。

また、企業の「ブランド」イメージとして利用することで社会に浸透していきイメージを定着させることもできます。デザインが統一された作業服で働いているのであれば、あの作業服は〇〇の会社だ!といったように、それがフックとなり覚えてもらえやすくなることは、特に珍しいことではありません。

社会的な要素

作業服を着ることで役立つこととしては、職業ごとの役割を見分けることができます。大きい建築現場だけではなく、運送業、イベント・スポーツなど、なにかしらの目的で人があつまりやすい場所においては、非常に効果的に見分けることができます。

作業服はひと目みるだけで役割がわかります。着ている職種と、場合によっては企業が特定できるので、社会的な役割を果たすことができると同時に、周りからの信頼も寄せることができます。仕事を依頼する側としては、一般的なラフでカジュアルな服装着ている人よりも、作業服で着ている人の方が安心して仕事を任せられます。

これまで説明してきた要素は、それぞれの業種で作業服を選ぶ前についてです。実際に選ぶときは、用途に合わせた予算や実用性などの観点から作業服を選ばないといけません。次に、作業を扱うことが多い主な職種を例にどのような点を確認していくべきかを説明していきます。

電気工事・電気設備工事系の作業服の選び方

電気工事士

電気工事・電気設備工事は、作業の性質上、動きやすさはもちろんのこと、実用性・機能・素材といったいろんな面に気を遣う必要があります。最近は日々研究が重ねられており、品質と専門性が高い作業服も販売されています。

着心地

作業服として頑丈で丈夫であることは当然なのですが、大きな動きをするような場面でも無理のない動きができなければいけません。たとえ丈夫な素材で作られていたとしても、動きやすさを維持している作業服を選ぶようにしましょう。また、作業服によっては、着たときに体の負担を軽くする工夫がされています。たとえば、肘や膝の曲げる・伸ばすときは影響がない、肩への負担がかかるアームホールは使わないなど、動きやすいパターンカットになっています。

求められる機能

作業に集中するために、快適な清涼感、保護性が求められます。業種によっては接触冷感素材を作業服に使っており、高い通気性をと合わせることで、夏の暑さと作業と作業場による起こる汗に対応している商品もあります。吸汗速乾の機能はもちろんですが、こうした清涼感機能の作業服を着ていると、暑さで気を紛らわすことなく仕事をこなすことができるでしょう。そして、当然ですが、制電性(衣類に一定以上の静電気をためこまないための規格)が求められます。購入の際はJIS規格に対応している帯電防止作業服を選ぶようにしましょう。

デザイン

見栄えだけではなく、実用性のあるデザインを選ぶようにしましょう。選ぶポイントとしては、たとえばポケットです。

  • ペン差しはあるのか
  • 二重構造のポケットか
  • コインポケットか
  • 収納力はあるのか
  • 個数は適切か
  • 適切な位置にポケットがついているか

など、実際にその作業服を着て働く人の使いやすさを考えたデザインなのかを確認するようにしましょう。パンツは、腰の部分のわっかがツインループになっており、カラビナがかけやすいデザインになっている商品もよく見かけます。実作業において使いやすいデザインかを考えることで、選んだ作業服に間違いがなく、中長期的に使いやすくなります。そして、作業現場によっては、金属製の付属品は禁止もあるので、より高い制電製品を選ぶことが重要です。

製造・工場作業系の作業服の選び方

工場作業員

着ている服を変えるだけでも、気持ち的に仕事の切り替えになることはもちろんのこと、効率的に仕事の向上にもつながりやすくなります。専門性のある製品を取り扱う場面でも、着心地を最も重視するようにして、その上で次に必要な機能が備わっている服を選びましょう。

着心地

作業服の用途が製造業や工場であれば、基本的に「動きやすさと着やすさ」で選びます。厚手の生地で着て屋内で作業すると動きにくくなる場合があるので、薄手の丈夫な生地で作られたものがおすすめです。特殊な立体カットをしている作業服、たとえば腕や肩回りを動かしやすいような設計の服ではあれば、急な大きな動きでもスムーズにサポートしてくれます。

また、春夏用、秋冬用のように季節ごとにわけて選ぶこともできるので、時期と職場の環境と合わせて選ぶとよいでしょう。

求められる機能

帯電防止機能と制電防止機能のあるものが人気です。特に、精密機械を取り扱う工場ではほこり、静電気は大敵なので注意したいところです。商品の品質を守るためにも、この「帯電機能」と「制電機能」があるかどうかを確認しましょう。着心地も維持にかかわる加工も大切です。特に、吸水性と速乾性に優れている作業服の方が、すばやく汗を吸収してくれるのと同時に、洗濯した後も乾きやすいメリットがあります。

最近では、汗を吸収しても臭いがしにくく、長時間の作業でも快適な着心地で作業を続けることができる抗菌消臭加工がされている作業服があります。

デザイン

作業中に服がひっかかりにくいデザインで設計されているかどうかを確認しましょう。たとえば、作業に支障がでないように装飾や突起物などはできるかぎり排除されている、もしくは露出しないように作られている作業服などがおすすめです。突起物がないことで、不注意で服をひっかけて事故を起こさないようにするなどのリスクを軽くすることができます。

中でも、デザイン的にも着脱しやすいブルゾンタイプが人気のようです。パンツの動きやすさ、ストレッチ性が高いだけではなく、バックルガードが付いていることも確認しましょう。作業服だけではなく、ベルトのバックルも隠すことができるので、物にキズをつけるなどのリスクも軽くすることができます。

建設・建築系の作業服の選び方

建設作業員

建設・建築に関連する業種では、特にハードな仕事でも耐えうるサポートがされている作業服が好まれます。

着心地

高い耐久性を維持しながら、動きの邪魔にならない作業服が求められます。たくさんの汗をかいたとしても、不快にならないように通気性が重視されるのももちろんですが、作業服によっては首元にも吸汗ニットを採用して、首回りも不快にならない構造になっている作業服もあります。

そして、屋外での作業もあるため、冬場では防寒機能をもった作業服の需要が高くなります。同時に、防寒服にも帯電防止機能が付いている商品があるので、防風性も確認しながら、好みの商品を選ぶようにしましょう。

求められる機能

何度も洗濯してもしわになりにくい・ヨレにくい・加工の落ちない・洗濯耐久性の高い商品も多く販売されています。また、汗をたくさんかくことがある現場で効果がある消臭・抗菌機能が備えられた作業服も人気です。

このような作業服の特徴として、両脇や両肩、首周りに消臭・抗菌テープが張られていたり、ジャンパーの背当てにメッシュがついていることが多いです。パンツも同様に消臭・抗菌テープが張られていることが多いので、同じシリーズで上下そろえるといいでしょう。

最近では、特殊な機能を使っている空調服も魅力的なアイテムの1つです。特に夏の野外作業でその効果が発揮されるこの空調服は、服の外から中に風を吹き込む小型のファンがつけられています。空調服の中に風で空気を循環させることで、暑くてもエアコンなどを使用できない現場では快適な体温を保ちながら作業を進めることができます。

また、溶接を行う現場では火の粉がこちらに飛んできても問題が起こらないような作業服がおすすめです。素材の選び方のポイントとしては、耐火性に優れた肌触りの良い綿が使われているのがいいでしょう。

デザイン

建設・建築の現場ではカーゴパンツ、ブルゾン、シャツ、パンツなど幅広いタイプのものが使われています。アウターは、袖ペンを収納できるポケットや内ポケット、物が落ちにくい逆玉のポケットなど、よく動く現場でも使いやすい工夫がされています。パンツはマジックテープで開閉できるポケットやツインループなど作業現場でも使いやすいポケットがあるデザインが人気のようです。

高いところで作業であれば鳶服のように足元の裾が広がっているダボ付いたニッカポッカも使われています。膝を曲げたり、足を高く上げたりする場合でも、ズボンに引っかかることなくスムーズに動くことができます。そして、ダボ付いた部分が障害物に触れることで足元の危険をいち早く察知しやすいメリットもあるのです。そうしたことから、このデザインのパンツが高いところでの作業現場で好んで使われています。

まとめ

コンテナに置かれた沢山の作業用ヘルメット

いかがでしたでしょうか?作業服に関しての基礎知識をいろいろ紹介しました。これであなたも作業服を選ぶ際の最低限の知識がついたと思います。作業服を選ぶには、各業種の用途に合わせたデザインや機能、着心地、コストのバランスを考える必要があることを理解いただけたのではと思います。これまで説明してきた用途・業種に合わせた機能を満たす条件を確認することで、ある程度のアイテムを絞り込むことができるはずです。そのあとに、実際に着た時の動きやすさと収納といった実用的な要素を追加で確認することで、自分がもっとも適した作業服を選ぶことができるでしょう。早く自分に合った世界一の作業服に巡り合って、翌日から作業が快適で楽しいと思われるワークライフを送れるようになることを応援しています。